昔TACTICSという雑誌があった。ボードゲーム紹介主体のSLG雑誌というと解るだろう。いわゆるコンピューターゲーム?の記事もあったのだが、基本的にはサイコロを振って遊ぶ原始的なボードゲームというものだった。これ結構好きで、古本屋で100円で売っていたのを何冊か買ったことを覚えている。この雑誌の秀逸なところは、自作のボードゲームがついていることだった。駒と折込の盤を紙面から切り離して遊んだものだ。一人で遊ぶ場合は、サイコロの介在があるかないかだけでコンピューターゲームとそれほど変わることは無かった。アラモの砦ゲームで遊んで、歴史を調べたのはいい思い出だった。ま、自分でコンピューター役とプレイヤー役をやるのは相当変だったみたいで家族の目は冷たかったが。やっぱりボードゲームは一人でやっても面白くない。


ボードゲームというものを結構好きだった。一番好きだったのは「ザ黒幕日本支配」ってやつだった。これは本当に傑作だった。人間が操作して面倒でないギリギリのシンプルさを保つことがボードゲームの肝でありそれを満たしているから傑作なのだと思う。そういった意味で大戦略はボードゲーム指向の強いゲームだった。サイコロが必要なのは戦闘の部分だけだ。あれをそのままボードゲームにすることは難しくないはずだ。そして、それが同時に弱点なのかもしれない。下手すると一人でボードゲームをするような退屈なことになるからだ。

大戦略を初めて遊んだのは「大戦略Ⅲグレートコマンダー」だった。中学時代同級生に借りて遊んだのを覚えている。マニュアルが異様に分厚くてそれだけでわくわくした。しかしゲーム自体はかなり問題があった。歩兵が一歩歩くだけで異常な回数のディスクアクセスがあり、めちゃめちゃ重たいのだ。後半になると一ターンで何十分もかかったものだ。普通のターン制ゲームと違って半リアルタイムな感じであり、少しやっただけで凄く面白そうだった。だから改良版の「Ⅲ'90」が出たときにはすぐに飛びついた。珍しく定価で買ったゲームだが、十分にモトを取れたと思う。ただ、やっぱり最後には名作という判定を出来なかった。単にコンピューターゲームというものを知らなかった時期に遊んだので楽しめただけのように思える。首都を爆撃するだけでいきなり終わるというようなザルすぎる思考ルーチンの問題もあった。リアルタイム制の複雑さを当時のCPU程度ではいかんともしがたかった。又、普通に考えるとターン制に比べると思考ルーチンは圧倒的に難しいので、プログラム技術的な問題もあろう。でも一番の問題は大戦略というゲーム自体が根本的にシンプルなので、「サイコロを自動的に振ってくれるボードゲーム」的な手軽な面白さというものが一番マッチしていたということではないだろうか。これは「4」にもいえる欠点だった。

というわけで、そのあたりのシンプルさは欠かせないわけで、それをうまく取り入れているものは現代大戦略EXだった。こちらは先述のグレートコマンダーとは違い、歴代で一番バランスが良く、良作と言ってよいだろうと思う。実はあまり期待していなかったので中古で買った。結論から言うとこれが面白かった。基本的に難易度HARDでやっていたので、CPUもそれなりに骨があった。難しいマップをクリアした後は自軍を中国軍(兵器が死ぬほど弱い、兵士が死ぬほど安い)にして朝鮮戦争みたいに人海戦術でクリアしたりとしゃぶりつくした覚えがある。ターン制なので、リアルタイム制に比べるとどうしても飛行機が弱く、地上部隊が団子のようになるので終盤がうざったいのが欠点だったが、まぁそのあたりは仕方がないと納得していた。が、やはり名作というほど楽しめない。最終的に単調で作業感あふれるものになってしまっているからだ。これはボードゲームをそのまま持ってきたというシンプルさが仇になっていて、要はシンプルすぎてCOMがチートする余地が少ないと言うところに問題がある。

例えば現代大戦略EXはCOMの持ち金をプレイヤーが決められる。だからCOMに大量の金を与えることで難易度調整は可能だ。都市の数で収入もばれるのでこの後の収入でCOMがインチキをすればすぐわかるだろう。というわけでインチキをしようと思ったら戦闘の部分しかない。これが実に難物で、COMだからと言ってMIGがF15より強かったりするとかなりまずいことになる。三国志で呂布が劉備に一騎打ちで負けるようだとさすがにまずいだろう、そういうレベルだ。その点信長の野望はインチキばかりだ。いつの間にか敵が最大兵力、敵が最大鉄砲、資金潤沢、でもこれでもOKなのは、「ユーザーから見えないところ」でそれを行っているからだ。良くも悪くもメリハリとなっている。大戦略は「ユーザーから見えないところ」が少ないのだ。

大戦略はボードゲームを一人二役で遊ぶようなものだ。それがいやならグレートコマンダーのように複雑にするしかないのだがどうも相性が良くないように思える。結局、サイコロの出目だけでメリハリを調整するのは無理で、ユーザーから見えないところに怪しい処理を入れるということが対コンピューターSLGには必要と思うのだ。そういう意味で大戦略はもはや根底からコンピューターゲームには適していないものなのかもしれない。