落語

工藤英一著「浮浪者を語る」(1) ~ガタロ よなげや【淘げ屋】 もう落語の「代書屋」を楽しめない

代書屋という落語で、最初に代書屋に入ってくる「ケッタイな」男、田中彦次郎。彼は非常に気楽な男で、代書屋という落語には不可欠な登場人物だ。彼が代書屋にテキトーな職歴を語って、イライラした代書屋が尋ねる。

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代書屋「だいたいの本職は何だんねんあんた?」
彦次郎「だいたいは、わたいはガタロだんねん」
代書屋「「ガタロ?」何やその「ガタロ」て?」
彦次郎「知んなはれへんか、ガタロちゅうてここまでのゴムの長靴はいて、川へこぉ入って行ってな、金網でガサ~ッとこぉすくて砂利の中から鉄骨の折れたんやとか、ゴム靴片一方やとか拾ろてるやつがおまっしゃろがな。」
代書屋「はぁはぁはぁ、あれガタロちゅうのん。初めて聞ぃた「ガタロ……」こんなもんこれ、いよいよ分からんがな。どない書いたらえぇ」
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そして、彦次郎が自らの商売を「ガタロ商を営む」というところで笑いになる。この彦次郎、女房も居て、なんだかんだ商売もやろうとしているわけで、普通に生活している感から笑いになるわけだ。
昭和の時代にもガタロみたいな人は居た気がするが、それはルンペンと同義で到底女房を持ったりはできないだろうから、この時代、つまり昭和初期の大らかさを感じるエピソードではある。


さて、このページに昭和初期の浮浪者を書いた本が紹介されている。国会図書館のアーカイブで読める。工藤英一著「浮浪者を語る」である。現在なら空き缶拾いのようないわゆる浮浪者の仕事を分類していて、著者自体がそういう人の福祉の立場にいた人ということでかなり詳しく書かれている。そして当時の浮浪者が浮浪者にならざるを得なかった理由として、関東大震災と資本主義の成熟を原因に挙げていて、納得させられるものがあった。


旧字が多く読みにくいし、いまだに読めない漢字もあるのだが、意味は十分にとれる。この中で「ガタロ」が「よなげや」と同意なのがわかる。この「よなげや」は落語に出てくるような牧歌的な職業ではない。当時の東京府から出るゴミが埋立地に運ばれて焼かれるのだが、その埋立地における焼却後の熱気のなかでごみを漁る。親指大のハエが腕を撫でるだけでごっそりと取れ、息をするとそのハエがごっそり口に入ってくるので歯を食いしばって作業をする。熱気で暑いうえ、周りが海の埋め立て地で喉が渇くが水がない、そこでゴミの中から腐った野菜や果物を汚れたまま頬張る。それが甘露のようなうまさで彼らは「山の実」と呼ぶ。

この「よなげや」のエピソードがいくつか載っているのが、長くなったので次回にしよう。

米朝死去

桂米朝が死んだ。個人的には一番か二番に好きな落語家だった。一番と二番に10人くらいいそうだが。残念ながら後継者はいないといって良いだろう。吉朝が生きていたらと思うととても残念だ。

米朝の昔の著作で80歳後半で現役の橘円都との対談があった。長生きするだけで一つの芸だ、と言っていたのがすごく印象に残っている。もうお客さんがいつ死ぬのか見たいがためだけに寄席にくるとか、そんな話もあったな。その円都と同じ89歳で死去とはすごい偶然だ。これで好きな落語家はすべて故人となってしまった。

王座戦第二局

羽生が後手、久々の四間飛車。後手番での居飛車だったら渡辺に勝てないだろうと思っていたので、俄然勝負が面白くなったように思えた。途中羽生は待ち一方で、8二と9二を交互に指して4手ほどパスしている。将棋をそれなりに指していると、一手パス程度のことは良くやるが、ここまで執拗にパスしまくるのは久しぶりに見た。こういった手番渡しは羽生らしさだろう。渡辺優勢で進みどちらも決め手を与えず終盤で羽生が勝った。手に汗握る将棋だった。羽生渡辺戦というのは華があって面白い。是非とも5戦目まで勝負してほしい。


僕はネット将棋をやるときに、先手番で二手目(つまり後手の初手)が3四歩ならば石田流を指すけど、先手番でもそれ以外の場合は居飛車。後手番では絶対に居飛車を指している。基本的に居飛車党だったのだが、腕が悪いのもあって後手番を引いて相居飛車だと勝率が悪い。振り飛車だから有利になるわけではないと分かってはいるが、今日の羽生を見て後手番振り飛車を試してみたくなった。そういった意味でも良い将棋だった。

落語初心者案内??

僕も真剣に聞き始めて3年くらいなので、初心者ガイドにふさわしいと思う。


落語は新作落語と古典落語という二種類に大きく分けられる。前者は現代の人が創作したもの、後者は江戸時代からあるものというところだ。人によっては新作落語なんて落語じゃねぇ、というかもしれない。僕も好きではない。ただ、いきなり江戸時代の話を聞いてもなかなか入っていきにくいので、新作落語で落語の雰囲気を味わうのはアリだと思う。


というわけで、新作落語から。古典落語と違って話が面白くて笑える。が、ただそれだけのものだ。


立川志の輔の「みどりの窓口」




 立川志の輔は古典もやるが新作もやる。新作しかやらない桂三枝とそのあたりがちょっと違うが、やっぱり古典は上手でないのが残念だ。これが気に入ったら志の輔の新作をいろいろ聞いてみるのも最初は面白いかもしれない。「はんどたおる」「親の顔」それなりに笑えるものばかりでお勧めできる。



次に古典なんだけど、通好みの大名人といわれる人の落語は聞かないほうが良い。例えば桂文楽やら三遊亭円生は大名人といわれているが、僕にはそれほど面白いとは思えない。多分、落語を聴き始める人も同様だと思う。後、立川談志はすごく下手というか落語の体をなしてないので、聞かないほうが良い。


トップバッターは桂吉朝 「ふぐ鍋」



僕が落語を好きになったのは、このふぐ鍋を聞いてからだ。吉朝は何をやっても上手な人で、平成の名人だと思っているが、残念ながら50才で亡くなってしまった。これほど死が残念な芸人は他にいない。


この「ふぐ鍋」は、まだ河豚が恐れられていたころの話で話自体は他愛も無いのだが、それをここまで楽しく聞かせるというのは、かなりの芸だろう。



吉朝といえば、師匠の米朝も出さざるを得ない。短いので「世帯念仏」



米朝で最も好きなのは「100年目」なのだがちょっと長すぎるので、この話に。米朝もどれも面白い。声や発声?が独特で、どれを聞いてもはずれが無い。



で、米朝といえばその弟子の枝雀(吉朝の兄弟子)も良い。

「代書」






この演目「代書」は明治大正あたりで、字のかけない人が多かった時分の話だ。履歴書を代筆してもらいに来た人の話。枝雀では「寝床」が最も好きだが、最初に聞いて面白いかどうかわからないのでこれにした。枝雀は単体で聞くと関西風のサービス精神旺盛な話芸かもしれないが、米朝をたくさん聞いてから聞くと、アレンジが大変面白いことに気付く。ただし、「代書」は米朝版の方が好きだ。これが気に入ったら米朝版も聞いてほしい。


上方落語は江戸落語に比べてサービス精神旺盛というか、変に威張っていないところが好きだ。もともと漫才等が強い土地柄なので、落語は苦労したという背景があるのかもしれないが。どちらにせよ上方落語の方が初心者向けの気がする。


次は江戸落語。


春風亭柳好「鰻の幇間」


 かなり定番の話で、やっている人も多い。 春風亭柳好は評論家好みではなく、大衆好みの落語家のように思える。独特の歌い調子というのも良い。華がある。江戸落語家では一番好きかもしれない。


幇間とは別名「たいこもち」という職業。元来芸者屋で、客と芸者をとりもつのが商売で、すごいのになると芸者何人分以上の働き、つまり座を盛り上げることが出来たらしい。今では東京に一人か二人居るだけのようだ。この落語に出てくる幇間は、そういった店に属しているものではなく、往来やら道々でべんちゃらを言って、金持ちからたかろうという連中のことだ。


三遊亭金馬 「二十四孝」





柳好同様、評論家よりも大衆人気の高かった人。米朝の著作によると、横文字をふつうに落語に出したのが通といわれる連中に気に入られなかった理由らしい。



最後は、 古今亭志ん朝 「鰻の幇間」



大衆人気もあり、しかも本格派という人はこの人以外いないのではないか。実力は近年随一のものだと思う。


鰻の幇間は、先述した柳好のも良いが志ん朝も良い。なぜ同じような内容の話をやっているのか?それの何が面白いのか?そういう疑問を抱いていて落語を聴けない人は、聞き比べてみることで落語への理解が深まると思う。


ここまで書いておいて、これは本当に初心者向けなのだろうか、と疑問がわいてきた。今回のエントリーは自信が無くなってきたが、とりあえず書いたから公開しておこう。ところで今回紹介している中で、まだ生きているのは志の輔と米朝だけである。

今日は棋聖戦

最近はニコ生で、最初から最後まで一日中生中継してくれる。チャンネルに限りがあるテレビでは絶対に出来ない芸当だ。名人戦の生放送をみるため二日有給を消化してしまったが、そのかいあってとてもおもしろかった。羽生はすごいと思うけど、森内にもがんばってほしい。つまり、どちらも勝ってほしいという一粒で二度おいしい棋戦だった。


今日は棋聖戦、「実家の事情」で半ばむりやり休んだが、羽生がまたもやストレートで勝つのかどうか等々、色々楽しみだ。

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