自然科学系の「入門」はだいたい社会科学系の本に比べると入門ではない。図や数式であらわされ、それを言葉に変換するということをしてくれないことが多いからだろう。又「XXはXXとみなすと・・・」というよくわからない数学的な置換を行い、何かよくわからんけどこういう形になったからOKというのが多くて、文系には辛いものがある。
この本を自分なりに要約すると、「あるベクトルと一連の直交する単位ベクトルの内積で特定のベクトル成分を抽出する」という概念を章を追うごとに拡張しつづけた話だった。ただ、後になるほどその拡張に無理があるように思え、頭で理解できても心が理解を拒否する感がある。最後の線形システムはかなり説明が足りないと思われる。
5章にフーリエ級数展開の実例というのがあるのだが、これは本当に意味がわからなかった。何日も悩んだ。実部、虚部、振幅、位相がK0~K10までならべてある表があるのだが、ここまで級数展開の話をしているわけだから勿論これを実際出す方法がかいてあると思うわけだ。結局最期に到達した結論は、この級数の元になる数式はどこにも書いてなくて、本当に羅列してある数値で、この数値を使って実例を述べると言うことだった。読解力が足りないだけかもしれないがわかりにくい。
何度も読んでみると理解できるが、当初これをこの本単独で読みこなすのが不可能だったので、以下のサイトを非常に重宝した。
このページ左メニューのFFT入門
やる夫で学ぶディジタル信号処理
上記サイトを直接見たほうが早かったという意味で、本自体はそれほど良いものとは言えないのだろう。だが、この本に出合えて世界が広がりよかったと思う。こういう評価もありではないだろうか。